日本経済はいま、大きな転換期を迎えています。長年続いたデフレからようやく脱し、物価がどんどん上がりはじめました。これに伴い「自分や家族を守るためにどうお金(資産)を増やしていけばいいのか?」という視点が、多くの人にとって現実的なテーマになりつつあります。
これまで日本では、マイホームは「人生の節目」や「新しい暮らしの拠点」としての意味合いが強く、投資や資産運用の手段と見なされることはあまりありませんでした。しかし、物価が上がるこの新しい局面を迎えて、住宅を「インフレ対策資産」として捉える考え方がじわじわ広がりはじめています。
インフレ時代における住宅購入の意味と可能性について、いま何が起きているのか、そしてどんなチャンスとリスクがあるのかをわかりやすく整理してみましょう。
インフレに強い「資産」としての不動産
世界的に見ると、不動産は古くから「インフレに強い資産」として知られています。物価が上がれば建築費や家賃も上がりやすく、それに応じて不動産の価値も上がるという仕組みです。さらに、固定金利でローンを組んで家を買えば、将来的にインフレが進んだときに「安いお金」で返済できる、というメリットもあります。
ただし、日本は特殊な状況が長期にわたって続いていました。長い間デフレが続いたことで、家を買っても資産価値が上がるどころか下がることが多く、「住宅=資産」ではなく「消費財」という意識が根強くありました。特に地方では、人口減少と空き家の増加により、家を買っても価値が下がってしまうケースも少なくありませんでした。
今は状況が変わってきています
近年、日本の物価は確実に上昇しています。2023年には消費者物価指数が前年比3%を超え、これは実に32年ぶりの水準です。また住宅価格も上昇傾向にあり、2024年には全国平均で前年比4.3%の上昇が見られました。東京など都市部では、マンション価格がこの10年で約60%も上がった例もあります。
これはつまり、「家の価格が上がりやすい時代」になってきたということ。もちろん全てのエリアがそうなるわけではありません。人口が減っている地域では、インフレが進んでも不動産価格が上がらないケースもあります。だからこそ「どこに」「どんな物件を買うか」がこれまで以上に重要になります。
いま家を買う3つのメリット
- 住宅ローン金利が低い
2025年3月時点で、日本の住宅ローンは変動金利で年0.3%台、固定でも1〜2%前後。物価上昇が年2〜3%あれば、実質的に「お金を借りた方が得」な状態に近いといえます。 - 家賃上昇のリスクを回避できる
今後、インフレに合わせて家賃も徐々に上がる可能性があります。マイホームを購入してしまえば、ローンが固定なら「支払い額が変わらない」ため、将来の家賃上昇から自分を守れます。 - 資産としての価値が見直されつつある
東京や大阪など都市部では、住宅価格が上がり続けており、「住むための場所」としてだけでなく、「資産としての家」に注目が集まっています。特に若い世代の間では、住宅をインフレ対策の一環として購入する動きも見られます。
注意点やリスクを忘れずに
もちろん「今買えば絶対に得をする」という話ではありません。以下のようなリスクもきちんと理解しておく必要があります。
- 金利の上昇リスク
今後、物価がさらに上がれば日銀が金利を引き上げる可能性があります。変動金利でローンを組む場合は、返済額が将来的に増える可能性があるので注意が必要です。 - エリアによる需要の差
都市部は需要が集中していますが、地方では空き家が増え続けており、今後も資産価値が上がらないエリアもあります。購入時には「その地域の人口動態」や「将来的に売ることになった時の可能性」をよく確認しましょう。 - 家そのものの減価
購入後の管理費や修繕積立費、維持費やリフォーム費用は今まで以上に考慮に入れておくことが大切です。インフレ時代ではそれらの費用が上昇する傾向にあるからです。
「夢のマイホーム」と「資産形成」が交差する時代
これまで日本では、「家は資産」という考え方はあまり一般的ではありませんでした。しかし、時代は変わりつつあります。インフレという新しい現実の中で、住宅を持つことの意味が再定義され始めているのです。
もちろん、家を買うというのは大きな決断です。「資産」としての価値も、「暮らしの拠点」としての意味も、どちらも考慮しながら自分にとってのバランスの取れた選択を見つけていくことが重要です。